卒業生に聴く アーティスト編

卒業生に聴く 大竹美佳さん 西村真人さん 後半

大竹美佳さん プロフィール:
横浜美術短期大学 グラフィックデザインコース卒業 専攻科彫刻科で勉強後、東京芸術大学大学院デザイン科へ進学
現在「C-DEPOT」というアーティスト団体に所属。立体人形作家として活躍している。
[☞ 大竹さんブログ:~テヅクリナヒビ~]

西村真人さん プロフィール:
横浜美術短期大学卒業 職業訓練校で木工家具の技術を習得。職人として勤めた後独立。
現在「ぶち木工」というブランドを立ち上げて活動している。
現在「C-DEPOT」というアーティスト団体に所属。立体人形作家として活躍している。
[☞ 西村さんのブランドサイト:ぶち木工]
[☞ ギフトユアタイム 西村さんのページ]

作家としてやっている人たちはどうやって生きているのか。現場がどんなものでどんな人がどんなことをやっているのか。

大竹さん
大竹さん

— 今日聞きに来てくれた学生に向けて、学生時代こういうことしておいた方がよいということがあれば聞かせて下さい。

大竹:いろいろ振り返ってみたのですが、学校のことは意外と真面目にやっていたなと思います。授業や課題は素直にこなしていました。意外とぶれなかったのが美術のバイトをよくやっていたな、ということです。子供の教室のアシスタントだったり、舞台美術だったり。やっぱり作家としてやっている人たちはどうやって生きているのかな?とか学生の時から既に興味を持っていたので、いろいろな現場に顔を出せるようにしていました。下手したらバイトして赤字になってしまっていることもあるくらいで、決して割の良い仕事ばかりではありませんでした。でも学生のうちから見ていたというのが後々やっていくノウハウにはつながったかなと思います。

西村:自分はやっておけばよかったと思うのが、大竹さんのことと同じなのですが、現場がどんなものでどんな人がどんなことをやっているのか、雑誌などで見てもわからないので、学生のうちから飛び込んで、インターンとか、ボランティアとか、自分の興味あるところに実際に行ってどんなものかというのを見るというのはやっておけばよかったな、と思いますね。自分の学生の時はお金にならないならめんどくさいや、といって遊んでたりしていたので。自分のやりたいなと思うことを知っておく。あとはフリーの場合、学生のうちから名前を知ってもらったりすることは大事だと思う。今技術を持ってなくてもいつか出来た時の為に人脈拡げという意味合いもそういうところで大事かなと思います。

— 今、短大から四大になって、結構ボランティアやワークショップの募集などが多いのでチャンスがあるときに参加するということですよね。

西村:自分のやりたいことと微妙に違っていても絶対無駄にはならないので、プラスに変えていけるかは自分次第ですが、いろいろ体験するのがいいかなと。

— では、卒業してフリーというか一人で始めて、一番大変だったことは?

西村:フリーになって大変だったことは、全部の責任が自分に来るということ。言い訳できないし逃げられない。自分がここで逃げてしまったらクライアントさんのすべてをダメにしてしまったり、イベントもパーにしてしまったり、逃げ場がない、思い通りにならないところ。一人でやっていると相談できない。

— 黄金町では周りのアーティストとの交流はあるんですか?

西村:交流は一応あるんですが、やっていることと系統が違う、アートじゃなくてモノつくり、作品じゃなくて商品を作っている人間なので、アートの話など周りが熱くなり出すとめんどくさいなと思うことも(笑う)ただ変な人も多くて、面白い人間も多いですよ。ちょうど8月から黄金町バザールとトリエンナーレが始まるので外人のアーティストもたくさん来てるんですよ。主にアジア人が多いのですが毎年そこで仲良くなって、他の国のことも知れて楽しいですよ。

— そこでまた、つながりが出来れば何らかの仕事に繋がっていくこともありますよね。

西村:刺激を受けることはたくさんありますね。

— 私なんかも若いころ、電話代払うの忘れて、電話が止まってしまうことなんてこともあったのですが、お金のことで大変なことってありましたか?

西村:最近はちゃんと気づくのですが、電気がよく止まって払い忘れていたりしていました。家賃も滞納したりしたことはあります。今も融通を聞いてくれるので、甘えてはいけないなと思います。

大竹:お金の面で言えば、電気とか止まったなどは全部経験しました。けれど、そこから先の独立を考えてからは減ってきて、やっぱり自己責任がかかってくるのでそういうこともきちんとできて独立になっていくと思う。私は来年から独立して自分が主宰して初めて教室を開くので今年一年間は準備中です。子どもの粘土教室を開こうと思っているのですが、その時にアイデアや今までの技術のほかに、責任だったり書類を交わしたり、お金のやりとりが始まっていくので、今までの意識とは変わってきて緊張感は常にあります。でもあまり辛いとか思うことがなくて、辞めたいなと思ったら終わりかなと思っているので、そこを思わない限りはやっていくしかないかなと。

自分でやっても会社に勤めても社会の中に自分がいなければならないことは一緒。

西村さん 大竹さん
西村さん 大竹さん

— 一人でやって行くのはつらいな、と思って、会社でも入ろうかなと思ったことはありませんでしたか?

西村:うらやましいと思うことはあったけどそれを口にすることはしない。どっちにしても辛いことは同じで、自分の責任だと辛いことも自分の責任だしと納得が出来るので人のせいにしなくなってきました。忙しくても暇でも自分のせいだし、さぼったりしても自分のせいだし。もちろん自分の失敗をフォローしてくれたり、相談にのってくれたり一緒に何か作ったり、もうらやましいなと思うこともありますが隣の芝は青いということだと思うので。

大竹:会社勤めはしようと思ったことは正直ないのですが、迷っている人には相談受けることがあれば勧めます。自分でやっても会社に勤めても社会の中に自分がいなければならないことは一緒かな、と思うのでそこが勤めることで気づくのであればその方がいいし、私は早いうちからいろいろな現場に出入りして社会の中に溶け込むのが早かったので、そのまま突き進んできた。大学卒業して思うことは、特別な存在である反面、いっぱいいる中の一人であると思うこともあって、アーティストばかりの中でいるだけでなく、いろんなひとがいて、モノをやり取りする相手は意外と会社員の人、業者さんだったり、作る人ではない人を相手にしていくことが意外と多いです。悩んでいるのであれば会社勤めも一つの方法かなと。やっぱり人とのコミュニケーションは会社の方がもっとわかりやすく学べるのかなと思います。

— 一度はちゃんと勤めた方がいい。迷っているのであればということ。

大竹:そうですね。自分のペースをちゃんとつかめなければ、一度そういうところに入ってどういうことをしているのかな、と知ることもひとつだし、そのまま続けることもひとつだし。

— それでは・・・今、欲しいものは何かありますか?

西村:広い職場とちゃんとした家。ステップアップしてもう少し展開出来たら。狭い中では出来ることの限界を感じてきているので、3・4年目になるので、今まで断ってきたことも出来るようになりたい。元は家具職人だったので、家具の要素も入れていきたいな、と思っています。

例えば工房を広くして、仕事も大きなものになってくると自分一人ではさばききれなかったりすると人を雇ったり、頼んだりいうことも出てくると思うのですが、そのことは考えたりしますか?

西村:僕は学生の時思っていたのが、自分が何をやりたいかというと一から十までひとりでやりたいな、と。もちろん自分が出来ないことは人に任せることもあるかもしれないけど、出来れば自分でやっていきたい。お金のことなどを考えると、人を雇うというより職人さんとかとパートナーとして組んで、ずっとではなくプロジェクトごとには必要かなと思います。

— 特に工芸の人って自分一人で全部やりたいという人多いよね

西村:そうですね。こだわりはもっていたいなと。

本当にやりたいことやこの先のことを考えていくと選ばなければならない瞬間がある。

— 大竹さんはいかがですか?

大竹:モノというか、いろいろやっていくと選ばなければならない瞬間があって、私は舞台美術をちょっとやりかけてた時期があって、何とか自主制作と両方やれないかと考えたのですが、その時に制作を選んで、続けることをまずしようと思っているのですが、もし叶うのであれば、舞台美術をもう少しやりたいな、というのが欲しいものになるのかな?と。やってみないとわからない感覚がそこにはあって、すごく迷っていました。

— ある意味、もっと大きい空間を自分で手掛けていきたいという気持ちですか?

大竹:そうですね。あれだけ大きい空間に触れる、携われるというのは楽しいし。もう少し専門性を持ってやる必要が出てくる時がきたかも、と思った。それを勉強したり、活動する時間があったらいいなって思います。

— 生活していく中でお金の面として、生活は大丈夫かな?というのはどうでしょうか?

大竹:ギリギリです。でもいわゆる贅沢みたいなものはもちろんできないですが、必要最小限のものがそろうことには不自由ない。やりくりは大変ですが、その分仕事をすることが楽しくなっているので、嫌だとか辛いとかはない。遊ぶことは出来なくなるというかしなくなるし、それが今の自分。ここから先ビックになることを妄想したりして楽しんでいます。

西村:僕は死なない程度に生活は出来ているかなと。ただ同世代の会社勤めしている人に比べると落ち込んだりするときもありますが、実際はあまりしてなかったり(笑)遊べなくなったりすることは僕もありますが、そこに欲が出てこなくなった。昔は毎週末飲みに行って遊びたいと思っていましたが、今は興味がなくなってきた。自分のやりたいことをやっているから。

— 仕事していることがある意味遊びに近くなっている。三度の飯を食うのと同じように制作するっていう、そういうからだになってきているのでしょうね

西村:ゆくゆくは余裕のある生活をしたいなとは思っていますけどね。

目標を決めて、そのためにどんな段階を踏んでいけばそこにたどり着くか。

会場の様子
会場の様子

— 学生のみなさんから質問はありますか?

学生:フリーで活動しようと思ったのはいつですか?また自己管理をどのようにしていますか?

西村:なろうと思ったのは学生の時からで、ただすぐなろうとは思ってなくて35歳までには独立すると目標を決めて学生の時に、そのためにどんな段階を踏んでいけばそこにたどり着くかな~と。ひとつのことを磨くより、自分の引き出しを増やしていく。飽き性なのでいろいろなことをやっていく。基礎は大切なので訓練学校に通ったりしました。自己管理は出来てないです(笑)

大竹:私もフリーでというビジョンは学生のときから何となくは思っていて、具体的には確信が持てなかったし、ここの十何年を振り返ると、ポイントになるのは出会ってきた人の言葉ですね。一番最初は短大の時の先生の言葉で「10年やってみてください。そうすれば辞められなくなりますから」と言われて、それを正直に真に受けて、じゃあ10年やってみようかなと。20代半ばになった時に大学院でとても憧れていた先生が、「20代のうちはとにかく何でもやりなさい。何でもやって20代は吸収できるから」と。その先生は30代に入ると、放出し始める、身になったことを出す方が始まると言っていて、言われたとおり、いろいろ覚えてきたものが形になり始めてきていて、それがすごく楽しくなってくる。そして3人目、ロシアに連れて行ってくれた業者さんが言ったのは、「仕事にする気がありますか?」と聞かれたんですね。自分の作品を自己満足ではなく、という意味で。聞かれたときに自分の中で固まった時に決まったかな、と。この先、どう変化していくかはわからないけど、この3つの言葉が私の選択をするきっかけの言葉だったかなと。自己管理は意識と共にそれもどんどん覚えて、何となくやり始めていく。やっていくうちにそうなっていく。いきなり管理しなきゃなんて思っていなかったので。でもだんだん定まってくれば管理は出来てくると思う。

— 管理しなきゃという意識を持たなくても無意識にも管理されちゃう。

大竹:体調は20代のうちに体力勝負のことはやっておいた方がよい。それを経験しておけばその後忍耐力の方が勝っていくので。その実感をしています。

— これで終わりにしますが、日々好きなことをやって行くうちに今の自分があるということですね。ありがとうございました。

 

▶ 前半:学生に向けて

Interviewer

ビジュアルデザイン研究室 教授 加藤 寿彦