卒業生に聴く アーティスト編
卒業生に聴く 大竹美佳さん 西村真人さん 前半
大竹美佳さん プロフィール:
横浜美術短期大学 グラフィックデザインコース卒業 専攻科彫刻科で勉強後、東京芸術大学大学院デザイン科へ進学
現在「C-DEPOT」というアーティスト団体に所属。立体人形作家として活躍している。
[☞ 大竹さんブログ:~テヅクリナヒビ~]
西村真人さん プロフィール:
横浜美術短期大学卒業 職業訓練校で木工家具の技術を習得。職人として勤めた後独立。
現在「ぶち木工」というブランドを立ち上げて活動している。
現在「C-DEPOT」というアーティスト団体に所属。立体人形作家として活躍している。
[☞ 西村さんのブランドサイト:ぶち木工]
[☞ ギフトユアタイム 西村さんのページ]
— まずはお二人のプロフィールをご紹介します。
大竹美佳さんは福島県出身で短大時代の卒業生です。今は立体を作っていますが、実はグラフィックデザインコースで2年、その上の専攻科彫刻科で2年勉強して、その後、東京芸術大学大学院のデザイン科へ進学しました。2年間芸大で勉強して、現在「C-DEPOT」というアーティスト団体のメンバーとして、立体人形作家として活躍しています。芸大を出てから助手としてハマビに帰ってきた時期もあり、現在はロシアで作品展示されたり、ワークショップなどで活躍されています。
西村真人さんは、短大を卒業してその後技術専門学校に入られたとのことですが、卒業後すぐに?

西村:卒業してからは住み込みで働いた後に、ハローワークがやっている職業訓練の学校に1年間通っていました。木工家具の技術を習得して、その後職人を5・6年やってから1人でやるようになりました。その後は半独立のような感じで、以前勤めていた家具会社に間借りをして自分の仕事をやりながら、他にもアルバイトで内装の手伝いをしながら生計を立てながら1年間やって、その後、現在の黄金町のアトリエで活動しています。
— 2011年から「ぶち木工」というブランドを作って、黄金町のレジデンスといって長期契約で場所を借りてやっているとのことですよね。
西村:はい。個人や企業、デザイナー、アートディレクターの方に依頼されたもので自分のやれることは何でもやるというスタンスでやっています。アーティストというより、下請けというか偏りなく出来る、職人とアーティストの中間の屋号にしたいと思い、「木工屋」と名乗っています。

— それではお二人の作品を見せて頂きます。大竹さんの球体人形から。
大竹:素材は紙粘土に近いのですが木粉粘土といって、木の粉で作ったものです。焼かずに自然乾燥のみで出来上がるものです。強度を入れるために石粉を混ぜたりすることもあります。人物と動物とそれらが組み合わさったものをモチーフに作っています。展示のときには空間も自分なりの設定を考えて展示しています。
— 続いては西村さん。これがロゴマークですね。これにはどんな意味があるのですか?
西村:これは友人のデザイナーに作ってもらったので、山の中に「ぶ」というのが入っていて、僕が会話下手で名刺交換の時に会話が生まれるようにというデザインにしてもらいました。あとは職人とアーティストの境目がないという感じのデザインを作ってもらいました。
— これはボールペンとシャーペンですね。色はどのようにしているの?
西村:これは着色ではなく、違う素材のものを寄木という手法を使って作っています。一本一本異なるのでたくさん並べて、お客様が見て直感でモノを選んでもらうこと、見て触って買ってもらうことを大切にしています。

— 1本作るのにどのくらい時間がかかるの?
西村:1本では作っていなくて100本くらいを4・5日かけてまとめて作ります。工程がバラバラなのでパーツを作っておいて、注文が入ったら組み立てるような感じで作っています。
— 正直なところ、儲かりますか?
西村:いや、儲かりません(笑)これが一番きついです。消費税が上がったことで材料費も上がり、値段を上げてもらおうかな、とも考えてはいるのですが。個人でやっていると値段をつけるのが大変で、初めのうちはどうしてもギリギリのラインで値段をつけてしまって、後で自分の首を絞めるという(笑)もう少し高くつけておけばよかったかな、と思うところもあります。そして、アウトドアブランドの「GO OUT」という雑誌と、洋服のブランド「エルネスト」という俳優のARATAさんがデザイナーをやっているところがあるんですが、この雑誌とのコラボ企画でアウトドア用のお皿を受注生産したりもしています。また「ギフトユアタイム」という作家とお客様が贈り物を一緒に作るという、モノを売るのではなくて作家とモノつくりをする時間を売るというコンセプトのもとに参加して作っているものもあります。

— 続いて、二人ともワークショップや教室の講師などもしているので、そのことについても伺います。大竹さんはロシアでもワークショップを開催されたようですね。
大竹:実は実家が元々そういう仕事をしていた関係で、ロシアに行く機会をもらいました。ほとんど言葉が通じません。通訳さんは一人ついているのですが、美術専門の通訳さんという訳ではないので、教えるための下準備で、絵で伝える資料を作って、教えてきました。
— あとは実際に目の前でやってみせたりして、教えるような感じですか?
大竹:そうですね。やっぱりものつくりで出会っている先生と生徒なので戸惑うのは初日だけ。あとはもうそんなに通じなくても出来上がっていきます。意志は通じあうものですね。
— これは何日間で出来上がるもの?
大竹:最短で3日間、最長が6日間。テディベアの作家さんが習いにきたりしていて、作品を交換したりしました。ロシア人は日本にとっても興味があるので、日本人形など喜ばれますね。お礼にクマ(テディベア)を頂きました。
— その他のワークショップはどんなものがありますか?
大竹:アルバイト先が美術と関係のない大学へ行ったのですが、そこで子供向けのワークショップをやってくれと言われたことがありました。ちょうど震災とかもあって復興支援で子供のワークショップをやりたいと学生さんたちのゼミで話が上がったので、その時にお声かけいただきました。手伝ってくれているのは全員大学の学生さんです。
— その大学は美大ではなくて?
大竹:はい。そこは商学部でどちらかというと、企画したり商売したりのイベントのお手伝いをしました。
— 似顔絵も描いたりしていますね。
大竹:知らないととんでもないことを頼まれたりすることもありました。即興で描いてくださいとか(笑)他にも、岩手県大船渡市のサンマバーガーというのを学生さんが考えて、そのハンバーガーのパッケージやシールに子供が描いた絵を取り入れたいということでお手伝いしました。制作しながらアルバイトをやらないとと思い、仕事もなかなか見つからないのであまりこだわらずに、近くの大学の事務職員になるつもりで採用されたのですが、5年間ずっと本の挿絵を描いていたという感じでした。だんだん自分がやってきたことが仕事になっていきましたね。制作と同時進行でいろいろなことをやっているうちに自分のやっていることと焦点が合ってきました。

— 次は西村さんについて聞かせて下さい。
西村:昨年、六本木ヒルズの10周年として森美術館でLOVE展というのをやっていて、それに関連して六本木TSUTAYAの企画として、LOVE展に出展している作家さんの関連書籍や六本木に関連するものをブックディレクターのハバヨシタカさんのセレクトする本の本棚のような小屋を作ってくれ、といわれて、それを作ったものです。
— ある意味ディスプレイのひとつみたいなものですね。
西村:そうですね。六本木TSUTAYAの入り口のところに小屋を作って、窓や椅子とか全部が本棚になっているというものです。その中で本を選んだり、座って読んだりできるスペースを作ったものです。
— 西村さん自身の作品も置かせてもらっているのですか?
西村:以前はボールペンなどを置かせてもらっていたのですが、在庫がなくなってしまったのでまた営業しに行こうかな、と思っています。他にもキギというアートディレクターのチームがあって、その方の展示会、代官山のヒルサイドフォーラムでの展示の中のパネルや展示台、作品を飾るもの、什器や飾りケースなどを作らせて頂きました。裏方なのですがボリュームがあって、正直ひとりでは大変でした。
— これは幼稚園から依頼されたんですか?
西村:これは幼稚園でのワークショップで、父の日用の寄木ブローチを作ろうというものです。幼稚園のアート教室をやっている方が「ギフトユアタイム」というWEBサイトの方と知り合いで、参加作家が入って、新しいワークショップをやろうということになりました。
— やっぱりいろいろなネットワークが繋がっていっていろんな仕事が来るということですよね。
西村:そうですね。個人でやるには個々のネットワークというのが大事で、自分の知らないところでいろいろ繋がっていたりしますね。基本、子供向けのワークショップはイベントとかでワンコインで30~40分で作品を持ちかえることのできる内容でやっています。先日も黄金町にアトリエを持っている作家たちで大学のギャラリーで2週間くらい展示でやらせてもらいました。

Interviewer
ビジュアルデザイン研究室 教授 加藤 寿彦