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興味の範囲を広げることや探求したい表現に取り組むことが鍵

准教授/修士 (美術)

丸山 祐介

MARUYAMA Yusuke

INTERVIEW 04
現在専門としている素材や表現方法へ至った経緯を教えてください
私は広告やCMなどグラフィックデザインに関わる仕事を目指して美術大学に進学しました。私が進学した大学では、1年次と2年次にデザインと工芸の両分野を横断的に学んでいくカリキュラムでした。横浜美術大学の新カリキュラムも、幅広い基礎を学ぶという点で類似していると感じています。課題で実材に触れることで立体表現に興味を持ち、立体作品の制作に関心を抱いたことがきっかけです。その中でも金属加工は難易度が高そうであり、挑戦したい気持ちも湧いてきたので金属造形専攻を選びました。結果的には自分に合った選択ができましたが、振り返ると知識不足のまま勢いで専攻を決めてしまいました。
現在は金属造形を専門とし研究活動を続けています。金属造形と呼ばれる分野は一般的に「彫金」「鍛金 i 」「鋳金 ii 」という3つの大きな分類に分けられますが、私はその中でも「彫金」と「鍛金」を組み合わせた表現で作品を制作しています。学生時代から現在まで約25年が経ちますが、金属造形に関しては未だに学ぶことや新たな発見が多く、制作に飽きることはありません。
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金属造形の魅力について教えてください
金属造形の魅力は、金属の質感や素材の持つ輝きなどの表情にあります。異なる金属素材ごとに独自の美しさがあり、銅や真鍮 iii、鉄、アルミニウムなどがそれぞれ持つ個性に魅了されます。例えば、周囲が映り込むほどの鏡面仕上げや、使い込まれて鈍く輝くドアノブや手すりなどの表情に惹かれます。特に魅力を感じているのは、金属の特性である錆です。錆は時間の経過とともに発生し、その色味や質感が変化していく様子は非常に美しいと感じています。私はこの特徴を活かしながら制作に取り組んでいます。
美術館や博物館に収蔵・展示されている金属工芸の高度な技術に触れると、伝統の重みを感じます。伝統として受け継がれる工芸技法も発生当時は新しい技術であったと考えているのですが、現代の作家たちが試行錯誤している新たな表現もやがて伝統の1つとして継承されていくのだと思います。常に新たなものを生み出す可能性を追求し、制作に取り組むことが私の課題です。
これまで影響を受けた芸術家を教えてください
幼い頃から鉄道模型やプラモデルなどの細かいものに興味を持っていました。小学生の頃は、ロボットアニメブームであり、超合金のおもちゃで遊んでいました。金属の重みや温度を感じたことで、素材の魅力を知ったのかもしれません。
大学入学前はグラフィックデザインに興味を持ち、熱心に勉強しました。当時、CMやポスターで活躍していた大貫卓也さんの心を揺さぶるような仕事に強く憧れを抱いていました。しかし大学入学後、グラフィックデザインに関する課題の内容が自分が思い描いていたイメージとは異なるものであったため、他の分野も考えるようになりました。その中で、元々模型や金属に魅力を感じていたことから、金属造形専攻に進みました。
金属造形を学ぶようになってからは、鍛金技法で作られた安藤泉さんの大きな動物の作品に強い興味を持ち、その作品たちを観るために、全国各地を巡りました。特に野外に設置された作品は、自然環境との調和やスケール感の豪快さなど、迫力と美しさを肌で感じることができました。仕事をするうえで安藤さんにお会いする機会があり、その瞬間はとても興奮しました。技術や創造力、作品への情熱に触れることで、自分自身の制作においても新たなエネルギーやインスピレーションを得ることができました。
クラフトコースでの教育や指導についてについて教えてください
私は常に「学生本人が主役である」ということに気づかせるように指導しています。授業で技術を学ぶ姿勢は重要ですが、それに慣れてしまうと受け身になりがちです。しかし、自分自身の表現を修得していくためには、自ら思考し行動することが不可欠です。クラフトコースでは、課題ごとに「素材を知る」「技法 (加工法) を知る」「表現方法を探る」というステップがあり、自己表現の確立を目指して学修していきます。
2年次は様々な素材と技法を知る目的で日常の生活で使用されるハンガーやスツール iv、ジュエリーなどについて、自分自身が広い視点から考え、素材を加工して形にしていくことを経験します。その過程を通じて、自身が興味を持った領域を発見してもらいたいと考えています。
3年次になると学生たちは各自が見つけた素材や技法についての探求を始めます。その中には伝統工芸技法に挑戦する学生もいれば、生活に関わる道具のデザインを考察する学生もいます。伝統工芸技法に挑戦する学生たちは、過去の技術や伝統的な製作方法に触れ、その技法を学びながら自分自身のアイデアや表現を加えて新たな作品を創り出すことに挑戦します。一方、生活に関わる道具のデザインを考察する学生たちは、使いやすさや機能性、美しさなどを追求しながら新しいアイデアを生み出します。家具やタンブラーなどの道具は、人々の生活に密接に関わるものであり、学生たちはそれらをより良いものにするために試行錯誤しながら新しいデザインを追求し制作していきます。
4年次は自己の個性を発揮し、より深く研究していくための重要な時期です。学生たちは自身が興味を持ち、熱意をもって取り組むテーマや表現技法を見つけ、創造的なアイデアや技術を磨きながら成長していきます。教員のサポートを受けながら、自分の作品をより一層深化させるために努力することが重要です。
志望学生 (や保護者指導者) へのメッセージ
1年次からさまざまな造形表現について幅広く学んでいきます。大学に入ると美術やデザインに触れる時間が増えるため、日常生活でも常に周囲との関わりを意識するようになります。大学に入ってから自分が目指す分野を見つけた方にも柔軟に対応できるカリキュラムとなっています。興味ある分野を広げることや修得したい表現を探していくことが美術大学で学修していく鍵となり、この意識を持ち続けていくと4年間で大きく成長します。
最後に、大学に入学したら最後まで徹底的に取り組むことが大切だと思います。私が伝えたい言葉は「覚悟を決めてのめり込む」「沼にハマったもん勝ち!」です。入学後でも遅くありませんので、目標を見つけてしっかりと取り組んでいきましょう。もし立体表現や金属、木などを扱った制作に興味を持っている方は、ぜひクラフトコースを選択してください。一緒に学んでいきましょう。


i:金属を金床や烏口などに当て金鎚で叩くことで形を変えていく金属工芸の技法
ii:金属を溶かし鋳型(いがた)に流し込んで器物などを作ること
iii:銅と亜鉛との合金
iv:肘置きがない椅子のこと

作品

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    作品タイトル: 御祀函
    素材: 銅、真鍮、銀、金箔、銀箔
    制作年: 2022
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    作品タイトル: あまぐも
    素材: 銅、真鍮、金箔、銀箔
    制作年: 2022
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    作品タイトル: HIKIFUNE
    素材: 銅、真鍮、銀、金箔
    制作年: 2020
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    作品タイトル: みちしるべ
    素材: 銅、真鍮、銀、金箔
    制作年: 2020
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    作品タイトル: 空の箱船
    素材: 銅、真鍮、金箔
    制作年: 2019
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    HOUSEシリーズ
    素材: 銅、真鍮、銀、金箔
    制作年: 2018
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    作品タイトル: House box
    素材: 銅、真鍮、銀
    制作年: 2008
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